─第一章─

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  「……ちなみに、これはいつから?」 「今朝だ。しっかし、あのみずのえともお前知り合いなんだな。びっくりだ」 煙管を咥えた颯は桜嵐に指示を出す。 無言で頷いた桜嵐は丙を別の部屋へ案内した。 「え、ちょ……桜嵐!」 通されたのは六畳程の部屋。 中央に敷かれた布団を桜嵐は軽く整えると、丙を呼んだ。 「みずのえ様がいらっしゃるまで時間があります。 それまでこちらの部屋でおやすみになられて下さいとのことです」 営業用の顔でそう言えば、答える間も与えずに丙を布団に押し倒す。 「颯様の御好意だ。 断るわきゃあねぇよなぁ?」 不敵に笑う桜嵐に固まっている丙。 なんせ男に押し倒されるなど初めてのことだったからだ。 「……あんた、それ素なワケ?」 暫く固まっている丙を見ていた桜嵐はぽつりと呟く。 「素、て……?」 「反応が初々し過ぎ。 ちょっともうあんた……可愛い過ぎる」 覆い被さられたまま丙は奇声を上げていた。 何故だろう。 物凄く身の危険を感じるのだ。 「え、え、ちょっ…桜、嵐……!!」 「ラン」 「らっ…らん!ラン!!ど、どいて……!!」 「やーだ」 「えぇぇっ!?」 首筋に彼の顔が近付いて来て、ぴりっと痛みが走る。 噛まれたのかとその時は思ったが、実は鬱血の痕をつけられていたなど知らなかった。 「ねぇ、ひのえ。 お前さ、オレのモノにならない?」 またしても固まってしまっている丙の代わりに第三者が返答をする。 「だーめ。 ひのえに手ェ出したら───殺すよ?」  
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