魔性の男

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今日で合宿も終わる。 あれから鈴谷さんの笑顔は見ることがなかった。 練習も一人で黙々とこなしていた。 僕は練習以外で鈴谷さんと声を交わすことはなかった。 だけど合宿の間何度も、あの人の視線を感じた。そして僕たちの視線は交差する。 それが最初の出逢い。 その次に会ったのは2ヶ月後でこの年のリーグ戦前の練習に参加した時だった。 「よぉ、調子はどうだ?」 「鈴谷さん…」 「んっ?なに」 「いえ、バッチリっすよ」 「そっか、良かった」 僕は鈴谷さんに話しかけられ、一瞬言葉に詰まった。 あの時の笑顔をまた見ることができた。 「あの…鈴谷さんって、」 「あぁ聞いたんだ」 「はい…」 「本当だよ」 「えっ!?」 「だから本当だっつってんだろ」
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