魔性の男

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「ヴー、んっあぁ」 朝からパソコンに向かいっぱなしで、縮こまった背中を伸ばした。 只でさえ身体がデカいのに、腕を伸ばすとさらにデカくなるから気になって思い切り伸ばせない。 仕方なく、息抜きにフロアからでて喫煙ルームに向かった。 幸い、喫煙ルームには誰も居なくてゆったりと身体を伸ばせた。 「…はぁ」 慣れない… あー腰、イタ 煙草を銜えて、腰のあたりをさすっていたら喫煙ルームの扉が開いた。 「よぉ」 「…ちわっす」 にこやかに入ってきたのは、鈴谷さんだった。 「少しは慣れたか?」 「そっすね…ボチボチです、でも腰が痛くてたまんないっすよ」 「ハハ、俺も入社したばっかの頃はそうだったよ」 鈴谷さんはゆったりとした動きで、煙草に火をつけた。 「良い整体紹介しようか?」 「今度、お願いします」 スーツ姿の鈴谷さんも決まっている。 一目見ただけでも判るほど、仕立ての良いスーツを身に纏っている。 普段見ることの滅多にない、メガネが鈴谷さんの色気を倍増させているような気がする。 あぁもう、こんなこと考えるなんて僕、末期だな… 「何?急に黙って」 「イエ、なんもないっすよ」
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