魔性の男

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「鈴谷さん…お待たせしました」 体育館の入り口で待っていた鈴谷さんに声を掛けた。 「時間、大丈夫だよな?」 「えぇ、まぁ」 「ついて来いよ」 鈴谷さんは僕の少し前を歩いている。 時々、後ろを振り返りながら。 僕は黙って鈴谷さんの影を追った。 体育館のすぐ近くの、大きな公園のベンチに腰掛けた。 皐月の心地よい風が吹き抜ける。 「………」 「…………」 沈黙の時間だけが、過ぎていった。 鈴谷さんは空を見ていたり、タバコをもてあそんでいる。 僕は思い切って鈴谷さんに話し掛けた。 「あの…何の話ですか?」 緊張の所為なのか、迫り来る夏の暑さの所為なのか喉が酷く渇いていて、思ったように声が出なくてうわずってしまった。
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