魔性の男

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練習帰りの公園でのやりとりから一週間。 仕事や練習、試合で鈴谷さんと話をする機会を作れずにいた。 却ってその方が良かったかもしれない。 少なくとも、僕は心の準備ができた。 今日は朝から酷い雨模様。 体を射すような冷たい雨が降っている。 体育館の屋根にぶつかって、バラバラと大きな音を立てている。 僕はまだ練習に集中できないでいた。 どうしても鈴谷さんの顔を見ることができない。 顔を見ないから、タイミングが合わない。 空振りする度に監督に大声で怒鳴られる。 今日は雨の音がうるさいから、監督の声も自然といつもより大きくなった。 「徳本ー!!テメェいい加減にしろっ!!やる気がないなら出てけー!」 「スミマセン!!」 「もぅいい!コートから出ろ!!外で頭冷やしてこい」 「ウス!」 駆け足で僕は体育館の外へ出た。 雨で外は霞んですぐ先も見えなかった。 答えは出たのに、いや出たからこそ意識してしまう。 気付いたからこそ、今まで以上に気になる。 盗み見る位なら、顔を合わせれば良いのに…。 意気地なし。 昔、誰かに言われたなぁ… 躊躇うことは、何もないー はずなのに、僕はあなたの前に出ると思うように身体を動かせないんだ。
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