魔性の男

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「徳本、中入れ」 キャプテンが呼びに来た。 「何か悩みでもあるのか?」 「………」 無言の肯定。 「透と何かあったのか?」 「えっ?」 不意の鈴谷さんの名前を出されドキリとした。 バレている? 「あったんだな?」 どうやら僕は嘘をつけない性分らしい。 「はい…」 「個人的なことなら聞かない、お前たちが何をしたって構わない、だけどチームに迷惑をかけるな」 静かだがはっきりと言われた。 「…すみません」 「怒っているわけじゃない」 キャプテンがフワリと微笑んだ。 どうやら本当に心配していたみたいだ。 「徳本、アイツ自分で魔性とか言ってるけど、根はマジメですごく寂しがり屋だからそこんとこ分かってやって」 「えっ、あっ…?はい…」 なぜ、キャプテンがこんな事言うんだろう。 …そう言えば、キャプテンと鈴谷さんて同期だったよな? あの二人もなにかあったんだろうか? 体育館に戻ってからも僕は精彩に欠き、やっぱり監督から怒鳴られた。
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