決死の思い

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「徳本、ちょっといいか?」 「はい…」 キャプテンの麻生さんに呼ばれ、僕は更衣室を後にした。 練習場の体育館のすぐ近くにあるファミレスに入るとアルバイトの店員が元気良く迎えいれてくれた。 店内は繁忙期を過ぎたのか、まばらに僕たちを含めて数組の客しかいなかった。 「急に悪いな…」 「いえ…」 「…で、何か悩み事でもあるのか?…………もしかして透と何か揉めてんのか?」 お絞りと共に運ばれてきた水の中の氷が音を立てて揺れた。 「迷惑かけてすみません…何でも無いんで…」 麻生さんに言っても良いのか悩んだが、黙っていることにした。 そうこうしていると二人分のホットコーヒーが運ばれてきた。 「お待たせ致しましたぁ!!ホットコーヒーになります」 普段なら気にならない、女の子の高い声がキンキンと頭に響いてうるさかった。 「何でも無いことは無いだろう?」 「本当に、…本当に何も無いんですよ…」 僕は力なく笑った。 「そうか………、なら俺が透貰っても良いか?」 「貰うって…別に僕のものでもないし…」 「ふぅん、じゃ良いんだな」 念を押すように問い掛けられる。 そんなこと、僕が決めることじゃないし決められない。
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