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星野屋に急ぎながら、ひとつ満足していることがあった。
たぶん、そうだと思って持って出た鍵で部屋に鍵を掛けて来ることが出来た。
何も思い出せなくても帰る家が在るだけで少しは安心することができる。
まだ、考えることは山積みなのだが。
さしあたって今、考えなければならないのは星野屋での対応だ。
遅刻している今の状況は考えようによっては都合がいいと言えるだろう。
遅れて申し訳ないという態度で入って行きそのままの態度で仕事をすればいいのだから。
考えがまとまり、気持ちも落ち着いてきたところで星野屋に到着した。
とりあえず、裏に回ろう。
鍵は開いているだろうか?まあ、開いていなければ表に回ればいい。
裏口のノブを回そうとするとカチャリと鍵の音がしてドアは内側から勢いよく開けられた。
外開きのドアをとっさに避けられず、額を強打してしまう。
痛みに思わずしゃがみ込んでしまうと、そこに、
「お、おい…大丈夫か?。」
と、声をかけれられた。
おそらく遅れてきた自分の為に忙しい中、鍵を開けに来てくれたのだろう、こちらを心配しながらも中の様子を気にしている。
血が出ていないのを確認すると、立ち上がり、
「大丈夫、それより遅れてゴメン。忙しいだろ、すぐに着替えるよ。」
相手が同年齢ぐらいだと見た目と態度から読み取り、不自然にならないように答えた。
さりげなくなく名札も見ておく、名札には愛甲と書かれていた。
愛甲は、
「ああ今、店長一人だから、先に行くな。」
と、中に入って行く。
その後について行きながら、
「店長、怒ってる?」
と、聞くと、
「別に怒ってなかったよ。けど後でちゃんと謝っといた方がいいよ。」
と、答えてくれた。
「わかった。」
と、返事をして店内の更衣室へと足を運んだ。
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