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更衣室で制服に着替えながら鏡に先ほど強打した額を映してみると少し赤くなっていた。
帽子を深めにかぶれば隠せるだろうが、これは絶対コブになる。
結構な衝撃だったが、それによって何かを思い出すこともなかった。
漫画やドラマのように都合よくはいかないらしい。
着替えを終えて調理場に入るとさっきの店員、愛甲とは別の男が牛丼を作っていた。
今は、愛甲と店長しかいないと聞いていたので彼が店長なのだろう。
心なしか貫禄のようなものを感じる。
早めに遅刻の件を謝っておこうと思い、
「遅れてスイマセン。」
と、言いできれば、なにをすればいいか言ってくれないかと期待した。
店長はこちらを見て、
「ああ、別にいいよ。これからは遅れる時は連絡してくれ。」
そこで、言葉を切ると後ろ向きになりプーっと吹き出した。
笑いながら、
「さっき頭ぶつけたんだろ。コブになってるぞ。」
と、言ってきた。
その姿からは貫禄の欠片も感じない、前言撤回だ。
コブになっていると言われたので触ってみると、「イタッ!」
と、少し涙ぐむほどの痛みがした。
思ったより腫れているようだ。
その様子を見て店長は、
「少し冷やしてろ。」
と、袋に氷を入れて渡してくれた。
そして、作っていた牛丼を持って表の方に行ってしまった。
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