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リリシエラがファライルの力を封じず、記憶を封じたのは、発現した力が強すぎたため。
消滅という強い力を封じても、その封印が消されてしまう可能性があった。
だから、リリシエラは記憶を封じた。
力を使えるということ自体を忘れさせた。
それほどに強い力を持っている。
持ってはいるのだが、
(すぐに使い切っちゃうのよね。)
ファライルはあまり負の気を食べないため、力がすぐに底を尽く。
(それでも役に立つ?)
そう考えて思い浮かべるのは、シゼルの顔、それにルセイルや、ナナ。
そしてエクリーン。
「あの人は好き。」
ぽつりと呟く。
(この力なんて関係無く、ただわたしだけを見て信じてくれた奇特な人……。)
良く引っ張られた右手を開いてみる。
あの馬鹿力を思い出した。
(痛かったけど、暖かかった。)
ズンっと岩壁が震える。
ファライルの眉間にシワが寄った。
「行こう。」
自分を守るための壁から出るための一歩を踏み出す。
ざわりと心が騒ぎ立てる。
みるみると支配されそうになる心を押さえ付け、握りしめた拳の中で、さらにきつく爪立てる。
(……っ、まだ、大丈夫。)
甘い感触に脳が蕩けそうだった。
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