第十四章

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苦い表情を浮かべながらも、デルアは一瞬で判断する。 目玉はすでに目玉の原形は留めておらず、赤紫色のアメーバがそこには広がっていた。 じわりじわりとだが、確実に広がっている。 「其は我が右手に宿るものなり!」 先程と同じ風の刃を右手に出現させると、エクリーンの腕に向かって投げる。 エクリーンは思わずぎゅっと目をつむった。 自分の腕が空に落ちていく場面が頭に浮かんで鳥肌が立つ。 だが、いつまでたっても痛みは来ない。 戦場でいつまでも目を閉じている訳にもいかず、エクリーンは目を開いてすぐに辺りを見渡し状況確認をする。 目の前には流れる漆黒の髪の少女がいた。 「ファラ、だよね?」 デルアは質問というより確認するように尋ねる。 一度この姿を見たことはあるが、確かにファラだと聞いた事はない。 「ふふっ、そうよ。デルア、駄目でしょう? エクリーンを傷つけるなんて。」 弾んだような声。あの時と同じなのかと訝(いぶか)しむが、言葉はエクリーンを労る内容だ。 「ふっ、うっ、ファラ、違うの。これをね、」
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