play④歩き出す者、送る者

2/22
9958人が本棚に入れています
本棚に追加
/413ページ
  朝。   太陽が山の稜線から顔を出し、その光が家々を暖かく照らす。   広々とした城の一室にもそれは窓から溢れんばかりに差し込み、眠っている男の頬を撫でる。     部屋には、すぐ外の庭木にとまっているのであろう小鳥の囀りと…   軽く扉をノックする音が響いていた。     「…ゼオ様。朝でございます。」   しかしながら室内から何の返答も無いので、リンダは再び扉をノックする。   「…ゼオ様。朝でございます。」   だがやはり応答は無い。   このままではせっかく持って来た朝食が冷めてしまう…   そう思い、再び扉をノックしようとした時。     「まぁたワッフル君寝坊~?」   「おはようございます、リンダさん。」   通路の先から、金髪の少女と青髪の女性が歩いてきた。   二人とも早朝だというのに身なりはきちんと整っており、その手は優しく繋がれている。     「おはようございます。 リスティル様、ティナ様。」   リンダはノックする手を止め、二人の方を向くと一礼した。     リスティルとティナは笑顔で思い思いの挨拶をすると、リスティルがドアに近付いて言った。   「よ~し、アタシに任せてよっ!」   そのままドアに両手のひらを添える。     「あの…」   「リィスさん、あまり乱暴には――」   やろうとしていることを直感的に感じた他の二人が声を発するが…   「とりゃっ!!」   …遅かったようだ。     ガシャーン!! 「どわぁ!?」 ガラガラ…   扉の向こう、部屋の中からは何かの衝撃音と男の悲鳴が聞こえてきた。
/413ページ

最初のコメントを投稿しよう!