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朝。
太陽が山の稜線から顔を出し、その光が家々を暖かく照らす。
広々とした城の一室にもそれは窓から溢れんばかりに差し込み、眠っている男の頬を撫でる。
部屋には、すぐ外の庭木にとまっているのであろう小鳥の囀りと…
軽く扉をノックする音が響いていた。
「…ゼオ様。朝でございます。」
しかしながら室内から何の返答も無いので、リンダは再び扉をノックする。
「…ゼオ様。朝でございます。」
だがやはり応答は無い。
このままではせっかく持って来た朝食が冷めてしまう…
そう思い、再び扉をノックしようとした時。
「まぁたワッフル君寝坊~?」
「おはようございます、リンダさん。」
通路の先から、金髪の少女と青髪の女性が歩いてきた。
二人とも早朝だというのに身なりはきちんと整っており、その手は優しく繋がれている。
「おはようございます。
リスティル様、ティナ様。」
リンダはノックする手を止め、二人の方を向くと一礼した。
リスティルとティナは笑顔で思い思いの挨拶をすると、リスティルがドアに近付いて言った。
「よ~し、アタシに任せてよっ!」
そのままドアに両手のひらを添える。
「あの…」
「リィスさん、あまり乱暴には――」
やろうとしていることを直感的に感じた他の二人が声を発するが…
「とりゃっ!!」
…遅かったようだ。
ガシャーン!!
「どわぁ!?」
ガラガラ…
扉の向こう、部屋の中からは何かの衝撃音と男の悲鳴が聞こえてきた。
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