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ディードはそれにいつもの笑顔で返す。
「ええ、今日は色々と立て込んでますので…
早速ですがこちらをご覧下さい。」
そう言って先程まで自分が見ていた羊皮紙を三人の方へ向けた。
「これは…どこだ?」
小さな村落とその周辺の地形のみがクローズアップして描かれた地図なため、ワッフルはそれがどこだかわからない。
そんな時、横から地図を覗き込んでいたリスティルがぽつりと言った。
「ん~、これはタイルの村だね~!」
「その通りです、リスティル魔法士。」
ディードはすぐにそれを肯定。
ワッフルは地味に悔しがっている。
そんな姿を尻目に、ディードは地図の村落の部分を指差し、言った。
「皆さんには、ここの偵察をお願いします。」
その仕事にワッフルは疑問が浮かぶ。
「なんでまた村の偵察なんざ?」
すると、隣にいたリスティルが答えた。
「タイルは国境の近くだから、今はすごい緊張が高まってるんだよ~!
村の人達もみんな移動しちゃってるから、駐屯してる軍の人もキッツイって話だよ~?」
再び悔しがるワッフル。
知識ではどうも勝てそうに無い。
「つまり私達の仕事はその方々の激励ですか?」
ティナも地図に目を向け、言った。
勇者の存在は、そこにいるだけで人々の支えとなるほど大きいのだ。
だが次の瞬間ディードは机の上で指を組み、真剣な顔つきへと変わる。
「…それが、駐屯部隊からの定期連絡が途絶えました。」
言うには、昨日到着予定だったタイル駐屯部隊からの定期連絡が届かなかったらしい。
(なるほどな。だから"視察"じゃなくて"偵察"か。)
ディードの言葉に、三人も表情を真剣なものへと変えた。
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