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「つまり駐屯部隊は全滅したということですか…?」
どこか不安そうなティナの問いに、ディードが普段より低く小さな声で答える。
「一概にそうとは言い切れませんが、その可能性は充分にありえます。」
さらにまっすぐに三人を見据え、言葉を続けた。
「よって、皆さんの仕事はまずタイルを偵察。
物資を積んだ補給部隊に織り混ぜて数名の兵士を同行させますが、もし敵に占拠されていた場合は即時撤退。
必ず情報を持ち帰って下さい。
何事も無ければ補給後帰還して頂いて構いません。」
そう言うとディードは組んでいた指をほどき、少し表情を緩めた。
緊張させないように、との配慮だろうか。
「現在、バルドア方面数ヵ所の国境付近で同様の現象が起こっており、優秀な偵察部隊が全て出払っている状態です。
ですので、この仕事は皆さんにしか頼めません。
どうかよろしくお願いします。」
そう言うとディードは静かに椅子から立ち上がり、頭を下げた。
「…ああ。」
「まっかせて~!」
「が…がんばります…。」
三人が思い思いの返事を返すと、ディードは頭を上げて微笑んだ。
「それでは、部隊を準備致しますので皆さんも準備を済ませておいて下さい。
出発は本日、正午です。」
「…っていきなりか!」
「事態は急を要しますし、ここからタイルまで歩兵の足で三日はかかります。」
小さい国だが、それでも三日はかかるんだな…
と、旅などしたことのないワッフルは思った。
そうと決まればここに長居してもいられないので、三人は執務室を後にする。
部屋から出た後、閉まってゆくドアの向こうでは再びディードが忙しそうに書類と格闘していた。
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