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「あ!それ探してたんだぁ!
ありがと~!」
リスティルはいつもの…いや、いつも以上の笑顔をリンダに向ける。
「リスティル様…」
リンダはそんな笑顔を憂いをおびた瞳で見つめている。
「…発たれるのですか?」
「うん!今日のお昼から、ちょっとタイルまで~!」
心配そうに尋ねるリンダに、リスティルは少し声を大きくして元気に答えた。
「心配いらないよ!
ちょっと偵察してすぐ帰ってく――」
「リスティルッ」
バサッとローブが床に落ちる。
リスティルの目の前にはリンダの胸。
すごく近くから感じる大好きな匂い。
心配させまいと紡いでいた言葉は、リンダに抱き締められることにより遮られてしまった。
「…アナタは魔法士なんだから、危なくなったらゼオ様やティナ様に守ってもらうのよ?」
「…うん」
「長旅になるんだからちゃんと食事もとって、夜の見張りは誰かに任せてアナタは安全な場所で寝なさいね?」
「…うん」
「それとすり傷に効く薬草を小袋に入れておいたから、転んだ時や靴ずれおこした時に…」
…やっぱりリンダは普通に話してくれるほうが嬉しい。
でも、一緒に戦えない体になってから…
アリシアが死んでから。
リンダはすごく心配性になった。
今もそう。
アタシを抱く腕は、不安で小さく震えている。
「…リンダ。」
リスティルは胸にうずめられた顔を上げ、リンダの目を見る。
心の底からの心配を映すその瞳に、ゆっくりと語りかけた。
「…大丈夫だよ。
ぜったい無事に帰ってくるから。」
「…うん」
リンダはゆっくりとリスティルを離すと、床に落ちたローブを拾う。
そして軽くそれをはたくと、優しくリスティルの肩にかけた。
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