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――ったく、女ってのはなんでこうもくだらないことで怒るんだろうねぇ…
駅前のファーストフード店で、大輔は途方に暮れていた。
灰皿には煙草の山。ホットコーヒー1杯とハンバーガーだけで、かれこれ1時間はねばっている。隣の席には女子高生が2人。彼女達は大輔が来る前からいたので、時折注文の品を持ってくる店員が迷惑そうに大輔たちの方を見ているのはよく分かった。
――あいつ、まだ怒ってんのかな…
携帯の発信履歴から同棲中の恋人・まゆの番号を呼び出し、通話ボタンを押してしばらく待つ。だが電話が繋がって聞こえてきたのは、相手の携帯の電源が入っていないことを伝える無情なアナウンスの声だった。大輔は小さく舌打ちをして、電話を切った。
家を追い出されるほどの喧嘩をしたのは初めてだった。鍵を部屋に置いてきてしまったので家に入れない上電話も繋がらないとなると、仲直りしたくともできない。大輔はいよいよもって進退窮まってしまった。
――仕方ない、またあいつに頼るか…
大輔は胸の中で呟くと、携帯のアドレス帳を開いて大学の友達・洋平に電話をかけた。
洋平は大輔のよき恋愛相談相手だ。まゆのこともよく知っているし、何より自身が芸能人並みのルックスで恋愛経験が豊富なのだ。不器用で口ベタな大輔は、まゆとの間に何かトラブルを起こしてしまうといつも洋平に頼っていた。洋平のアドバイスは驚くほど的確で、言われた通りにすればすぐに仲直りできる。大輔とまゆが色々トラブルを起こしながらも上手くやってこれたのは、ひとえに洋平のおかげと言っても過言ではない。洋平にはいい加減自分達の問題は自分達だけで解決しろ、と言われてはいるのだけれど。
「…はい?」
2~3回のコール音の後、洋平は気だるげに電話に出た。今日の予定を聞くと、特に何もないとのこと。これ幸いと大輔は駅前のファーストフード店に来て欲しいとだけ伝えて、電話を切った。いい加減長居しすぎでなんとなく申し訳ない気分になり、荷物を置いたまま席を立ってレジへ行き、コーラのLサイズとチキンナゲットを注文した。これでも1時間以上の長居の割には合わないのだろうがその辺はもう気にしないことにして、大輔はコーラを啜った。隣の席では相変わらず、女子高生2人がぺちゃくちゃお喋りをしていた。
「よう、待ったか?」
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