お片付け

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お片付け

壁に張り付いたクリーム 床にイチゴが一つ落ちている 赤く染まった絨毯は、昨日は白かった 割れた硝子片はシャンパンだったもの 目を醒ました、わたしに飛込んだ光景 昨日のわたしの諸行 バレンタインもクリスマスも イベントらしいイベント全て我慢してきた 昨日だけは 昨日だけは。一年に一回、わたしだけの日 贈られたものはメール一文 電話ですらない 返信せずに投げつけた物は、ケーキだった 今日の為に用意したシャンパンが、壁に叩きつけられる 喉をうるわすはずのカロン・セギュールは、絨毯に与えてあげた やり場の無い気持ちというものは、どうしても晴れないのだが ただ。 目の前の光景を、今のわたしの心情に合わせたかった ひとしきり暴れ 起きた時間は昼過ぎ 携帯には会社からの着信履歴数件 確認はしたが、かけ直す気には成れない ベットに腰掛け眺める部屋の惨状は 昨日のわたしを満足させたが、今は重くうつる 誰が片付けるのだろう 夜は終わり、今は朝だ わたしがしでかした事、ちゃんと片さないといけない ソースに絡まれた電話を手に取り 「もしもし、奥さんですか  初めまして、わたし‥‥‥」
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