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「人工的じゃないか、何もかも」
ケースに入った三毛猫が、私を見つめて言う。
「全く、不思議だよ人間は。動物も、植物も、みーんな自分好みの味や姿に作り替えておいて、その中で悠々と暮らしながら、まるで自分は関係無いかのように人間のエゴに憤慨するんだ。滑稽だと思わないかい」
「そうね。でもそれが人間よ。愚かだとは思うけど、もう手遅れね」
「じゃあ、この星はどうなるんだい。その愚かな人間のせいで破滅に近づいてるこの星は」
「滅びるわね。高い授業料だけど、火星とかに移り住んだ時に反省を生かせばいいでしょ」
そう言って、私は手元のボタンを押した。
三毛猫の入ったケースにガスが満たされる。
はぁ、とんだ失敗作。
人間の言葉を話す猫……絶対売れると思ったのに。
飼い主を不快にさせるようでは駄目だ。
人間にとって都合の悪い生き物に存在価値は無い。
全ての生き物は、等しく人間の支配下に置かれ、人間に危害を加えれば殺される。
それは当然の事。
不快な虫は殺し、可愛い動物は愛でる。
それを何とも思わないのが人間なのだから。
「……やはり猫は利口過ぎたか」
私は呟き、ガスで満ちたケースを一瞥し、ふうと一つ溜め息を吐いた。
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