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黒い画用紙に、白の絵の具を点々と乗せる。
小さい頃の僕はこれを宇宙だと、得意気に母に見せていたという。
押し入れの奥から、今頃になってその絵が出てきた。
A4サイズの画用紙に詰め込まれた宇宙。
白い絵の具で表された星々。
小さい頃の僕は、広大な宇宙をこんなに小さく切り取って、自分の物にしていたんだ。
そう思うと、ため息を溢さずにはいられなかった。
今の僕は、この白い点の中に小さく収まって、窮屈に耐えながらもがいている。
焦燥感、圧迫感。
余計な感情に流され、辺りを顧みる事なく、ただ自分の居場所を手に入れたいがために生きている。
こんな小さな点の中で、何十億の人間が争い、いがみ合い、時には偽りの握手を交わしながら、自分の居場所を探しているのだ。
そう考えたら、今度は笑いが溢れてきた。
滑稽だ。あまりに滑稽。
宇宙はこんなに広いのだ。
この画用紙に白い星を百、描いても、広大な黒い空間はまだ残るだろう。
小さな僕の手で切り取られた宇宙でさえ、こんなにも可能性に満ちているのだ。
手を伸ばし、空間を掴んでみる。
出来ない事など無い。
そんな気がした。
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