携帯電話

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  君が最後の日記に載せたのは、唐綿の花の写真だった。   花屋を志す君のメッセージは、最初僕には理解出来なかった。   どうせなら忘れな草あたりにしといてくれれば、すぐに気付けたのに。   君は本当の名も知らない、このサイトだけの友達。   なのに僕は、君からのメッセージを待って何度も画面を確認する日々を過ごしていた。   君は本当に花が好きで、文面から読み取れるほど楽しそうに、花の話をしてくれた。   そんな君とのやり取りは、まさに僕の心に花を届けてくれていたんだ。   その君がここを去ると言う。   夢が叶ったのか。忙しくなるからと言っていた。   所詮、君の中では僕は液晶越しの仮初の存在。   最初から君と僕には大きな隔たりがあったわけだ。   この小さな画面から抜け出せない僕と、大きく羽ばたいて行く君。   どこかで、現実に生きている君には僕の気持ちは伝わらないだろう。   最後のミニメを打とう。   僕が泣いていても、絵文字が代わりに笑ってくれる。   ああ、そうか。   だから僕は仮初だったんだ。   心を隠すのにはつくづく便利な機能を持ったこの機械が、今は憎らしく感じたのだった。  
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