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『…雀が…っわたしの代わりに人柱に…なんてことっ』
手を口に寄せ身体を震わせ椿姫は必死に涙を堪えておりました
しかし殿を見てはっとしました
殿様の腹からは、刺さった刀の所から赤い血がじわじわと滲みでていました
『―あの娘の清らかな心と…命…わしの権力があれば…椿…お前の代わりになろう…』
『御父様っ…』
――だんだんと
殿様の意識は薄れ行き
瞳を閉じてゆきました
『…っ…誰かっ…誰かおらんのかっ』
冷たくなってゆく殿様の身体を抱き、椿姫は必死で声を張り上げました
――
―――…妻よ…
わしの愛し妻よ…
やっとお前のもとへと逝ける…
椿…
いつまでも…
いく年が過ぎても
フタリお前の傍に――
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