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椿姫は必死に走りました
城下町の人々は桐の箱に入った鈴音を椿姫だと思い、山の梺へと運んでおりました
『…はぁ…はぁ…っ…待って…どうか…』
椿姫は裸足で白無垢が泥で汚れるのも構わず走り続けました
―――
…――カ…ー…ン
遠くで丑の刻の鐘がなり響くのが聞こえました
無月の晩…
雨が降ってきたこともあり外は真っ暗で何も見えません
それでも鈴音を運ぶ火を頼りに椿姫は走り続けました
裸足は山の木々により赤くそまり…
白い肌も…
美しい黒髪も乱れ傷だらけになっても
…鈴音の…
愛しい妹のもとへと走り続けました
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