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『椿様――っ…誰かっ…誰かーーっ!』
鈴音の叫びは虚しく響き渡るだけ…
それでも鈴音は必死で叫びました
…その声が枯れるまで
暗く何も見えませんでしたが、椿姫の身体はまだ少し温かく
…少しだけ息をする音が聞こえました
(……椿様)
まだ生きている…
鈴音は自分の着物を破り、手探りで椿姫の止血しました
そして椿姫を肩に抱き抱え、ゆっくりと立ち上がりました
『―――…っ!!』
――強烈な痛みが左足に響きました
(う…堕ちたときにぶつけたんだ
…肩もいたい…)
――でも…椿様が守ってくださったからこれだけで済んだ…
護る為に捧げたのに…また命を救われた
鈴音は出てくる涙をぐいっと右手で拭い、左足を引きずりながら歩きはじめました
――…ズル…
――…ズル…
(何もみえない…
…どっちからきたかも分からなくなりそう…)
鈴音は自分の血を岩壁に塗りつけながら、ひたすら歩き続けました
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