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<ああもう離れなさい>
<ぁあぁぁーん>
充電が完了するまで約5分
ようやく俺が体を離すと、サリーは懐に入れていたであろう、チョコバーをくれた
半分を俺が噛み切ると、残り半分をサリーがもそもそとくわえた
<糖分摂取したら落ち着きまし
たか?>
<うん>
涙目の俺を、無言でぽんぽんするサリー
サリーのチョコバーが無くなるくらいになって、話は戻り始めた
<改めまして、現状のやばさを
再確認しますよ?>
<うん>
未だに現実感が無い危機的状況
それを正確に見据えるには、やはり第三者の目がありがたい
<無くなったものは、財布にキ
ャバクラの会員証に誕生日に
嫁にもらったロムクハーツの
カフスに、…魔王の職業証明
書まで、ですか>
<………はあ>
ちなみに、ロムクハーツのカフスは、アパートが半年くらいは借りられる値段はする
<……走ってる間に落ちたかな>
<いや、どう考えても…>
サリーが言わんとすることは分かり切っていた
しかし、認めたくない
そうであって欲しくない
その一心だった
<デート詐欺みたいな、…それ
のとびきり悪質なもの>
<ごめん>
反射的に、俺はサリーのことばを遮った
そうして衝動的に握ったものは、城内放送のマイクだった
<城内放送、城内放送
あー、手の空いている人だけ
でいいから、周辺で俺の持ち
物 …財布とかなんだけど、
探してくれないかな
悪いけどお願い!>
ひどく、惨めな自分に吐き気がした
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