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「実は…愛歌。」
いつになく真剣な表情をした浩介に愛歌は小首を傾げ先を促した。
「俺は愛歌を愛してる。」
「私も愛してるわ。」
愛歌はニッコリと答えるとキリマンジェロを一口飲んで満足そうに「うん、不味い」と言った。
「実は…結婚、してほしいんだ。」
「結婚?」
突然のプロポーズに愛歌はキョトンとしていたがやがてまた一口キリマンジェロを飲み、ゆったりした動作でカップを置き口を開いた。
「私の返事は――」
「先に俺の話を聞いてほしいんだ。返事は…その後に欲しい。」
「いいわ、聞きましょ。」
「俺は昔妻を亡くしてバツイチだ…君を養う自信はある。
だけど…迷っているんだ……その……。」
後の言葉を愛歌はひらすら待っていたが、中々言い出せない様子だったので愛歌が口を開こうとした時だった。
愛歌はこの時を決して忘れない。
「君を――母にする自信がないんだ、俺には子供がいるんだ。
その……中学3年の息子が一人。」
忘れることなんてできない。
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