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「なんだてめぇは?」
俺は思わず振り返る。
だが、目の前の男が実は霊能力者で幽霊が見えているということでは無い限り、
どう考えても俺の半径20メートル以内にいる人間は、俺と未来とその男だけだった。
つまり、それは全く無駄な行為だった。
「え……?えーとですね……俺は」
なんと説明しようか、と考えようとした矢先。それは何かを発見した男の声によって中断された。
「お嬢っ……! その服はっ!?』
男が指差したそれは、無惨に破かれた未来の着ているワンピースだった。
それは怪我をした俺の腕に、未来が自分の着ていたワンピースのレースの部分を破り、巻いてくれたものだ。
「あ、えっと、彼は次郎くんで、このワンピースはですね……」
男は何故かワナワナと震えている。
「てめぇ、やりやがったな……」
男はそう言って、再び懐から短刀を取り出した。
「え? え? いや、俺は何も……」
「小僧……そんなに死に急ぎてえか。なら…潔く成仏しやがれいっ!」
刹那、男は俺に向かって、先ほどの未来に駆け寄った時と同じように走ってきた。
ただ、同じようにとはいっても、現在の男が抱いているのは、愛情ではなく殺意だろう。
「ちょ! 待て! 誤解だごか……うわあああー!!』
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