2章 引きこもりと未来と大桜一家

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「あ、いや……。別に俺はそんな……」 スーパーヒーローのように、救出にいたる過程が、最初から最後まで格好が良いものだったのならば、『いえ、当然の事をしたまでです』など気障っぽく言えるのだろうが、残念ながら俺の登場シーンは本当に最低のものだった。 だから、そんな風に感謝されると却って後ろめたくなってしまう。 「その腕の傷はお嬢を守った時に付けられたものだとか……。いや、天晴れな侠気、感服致しやす」 俺はさきほどの逃亡劇の後、当然ながら呼吸困難と重度の酸欠状態に陥り、地面に倒れもがいていたために、未来が飯塚さんにに事情を説明するのを聞くことは出来なかった。 どうやら、それは随分と誇張されて伝わっているらしい。 ま……。でも勘違いさせておいても損はないだろ。 なので、俺は敢えてそれを訂正はしなかった。
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