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「次郎くん」
「あん? 今度はなんだ? 恋人にでもなりたくなったか?」
「ち、違いますっ!あの、友達になってくれて……ありがとう」
彼女のありがとうという言葉を聴くのは、今ので何回目だろうか。
「ああ、いいってことよ。これからもよろしくな、未来」
友達くらいで何を大袈裟な……。そう思ったが、俺はそう答えていた。
「はいっ、こちらこそです」
彼女はそう言って笑った。
俺が見たいと思っていたもの、未来の本物の笑顔。
ゆっくり傾く西日が彼女の白い肌をオレンジ色に染め、長い黒髪にキラキラ反射するのがとても綺麗だった。
こうして俺と未来は出会った。
引きこもり生活一年目にして、偶然外に出ることになってしまった俺を待っていたのは、
スーパーの店員と
散歩中の犬と
おっかないヤクザとの攻防と
眩しくて、温かくそして綺麗で可愛い、女の子の笑顔。
そして何かが起こりそうな、ドキドキする予感だった。
「あ、買い物袋忘れた……」
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