2章 引きこもりと未来と大桜一家

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「それで……買い物袋は消えていたと……」 「……」 公園に走って戻った俺だったが、買い物袋を置いたはずのベンチにはなぜかそれは無く。 「それを探してるうちに財布も落としてしまったと……」 そういうことだった。 「参った……財布ん中には全財産入ってたんだよ、お袋が帰ってくるまでどうやって生きりゃいいんだ……」 「え? どういうことですか?」 俺は未来に簡単に今日の経緯を説明する。 「そうだったんですか、ごめんなさい私のせいで……」 言いながら、未来はしょんぼりと肩を落とした。 「いやいや、未来のせいじゃないだろ。頼むから気にすんな。心配ねえ、家には乾燥わかめとか椎茸とかあったし……。いざとなったらそれを食って……」 「次郎くん怪我してるんです。そんなもの食べさせるわけにはいきませんっ」 「そうだっ、今日は家で食べていって下さいっ」 未来はしばらく考え込んでいたようだが、そう飛びっきりの笑顔で言ってくれた。
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