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「だったら、今しようとしている馬鹿なこともやめて下さいっ!」
「そ、それでも…あっしは……」
未来の怒声(そう言って良いかは自信が持てない)に片膝をついたまま、男は俯く。
「飯塚さん。どうか頭を上げて下さい」
「はいっ……」
男は未来の言葉に頭を上げると、彼女じっと見つめた。
「私たちはお姫様と家来じゃありません。同じ大桜の家に住む家族です。家族が家族を罰しようなんて思うわけないじゃないですか。家族が同じ家族に願うのはいつだってそう、元気で笑っていて欲しい……それだけなんですよ」
彼女の声は俺と話していた時とはまるで違っていて、それは透き通るような凜とした響きを持っていた。
「それでも、飯塚さんは私が悲しむようなことをどうしてもしたいと、そうおっしゃるんですか?」
「お嬢……俺は……」
「そんなことは、私もお父さんも、みんなも、誰も望んでなんかいません」
俺は目の前のやりとりをただ黙って聴いていた。
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