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『姉上ー!』
楽しそうに、嬉しそうに笑いながら優しい姉に駆け寄る少年の夢を見た。
それは余りにも幸せそうで、幸福な時間…
けど
それを奪ったのは――…
「なぁ、ガイ。憎いか?ファブレ公爵が…そしてその息子の俺が。殺したい程に、なぁ…?」
「ッ……!」
ガイの震える手が剣を握り、それが俺の心臓を狙う。そしてその時の引き攣ったなんとも言えないガイの表情が、俺は堪らなく好きだ。
本当に
壊してしまいたい、と思うほどまでに愛おしい。
「お前の親がっ…全て奪った…ッ!」
そうだ
「家族も、なにもかもだ…!」
そうだ
俺はお前の仇の息子だ。
「だからッ…同じ苦しみを…!奴に味わせて…っ「やるんだろう?だったら、早く殺せよ。」
憎い
全てを奪ったあいつが。
殺したいくらい憎い
なのに…
「…ッ…愛してる…」
「あぁ、知っている。」
「お前が、好きだッ…」
「だろうな…」
奪った筈なのに
また
与えたのは…
こんなにも深く深く、愛を与えたのは紛れも無い『仇の息子』
カラン…、と音をたててガイの握っていた剣が床に落ちると、瞬間的に口唇と口唇が重なり合った。
そうだ。
お前には俺を殺せない。
殺せない程に、愛してしまったから。お前の『命』は、一生俺のもの。
誰にもやらない。1ミリだって、お前の気持ちは誰にもやらねぇ。一生俺を憎み、一生俺を愛せばいい。そうだろ?ガイ…テメェは俺のもんだ。心も身体も全部。
「ガイ…テメェに俺は、殺せねぇ」
END
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