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何処を捜してもお前の姿は見つからない?待てど待てど、お前の居ない現実が胸に突き刺さって痛い。
アッシュ
お前は今何処で笑ってる…?
「ガイ!」
すっかり自分の想いのなかへふけっていると、さっき聞こえた声が再びすぐ傍で耳に響いた。
顔を上げて相手を見れば、今日のガイは一段と電波ですねぇ、と彼は笑った。
それに対して苦笑いを返すと、同じように相手も笑った。
「なぁ、旦那。もう此処までくるとさ…オレって病気だよな」
「…そうかもしれませんね」
何時だって、旦那はオレの言葉を否定しない。それは優しさなのか、只の無関心故なのかは本人しか解らないことなのだろう。
けどたまにそれが酷く嬉しかったりもするんだ。
悲しいのに、嬉しいって何だ?
この世界は何時だって矛盾に包まれている。なんて不完全なんだろう。アッシュを失った悲しさは何時何処へと流れていって消え行くんだろうか。
不思議だ
「なぁ、旦那…何処まで行ったら、人間は楽園にたどり着くのかな?」
「それはまたドリーマーな質問ですね…」
「駄目かい?」
屈託のない笑顔で、嫌いではないです、と答えるあんたが、オレも嫌いじゃない。
こんな
お前の居ない世界で独り生きてみて、オレは何を見出だせるだろう?
いつかはお前を忘れてしまって、また恋をしたりするのかな?
それは正直痛いな。
でも大丈夫。
例えそうなったとしても、お前の誕生日だけは
あの丘で
独り
お前を想って泣くから
いつかはお前がいる楽園-シャンバラ-へと、たどり着いてみせるから―――…
「ガイ」
急にまた名前を呼ばれてオレは慌てて顔を相手に向けた。そうすると彼は柔らかく笑み、一匹のブウサギを抱き
「さぁ、陛下がお待ちです。行きましょう」
ただ一言
そういった後に
それから花束でも買いに行きましょうか
と彼は付け足した。
END
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