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大広間。
祓達がついたその頃には、相変わらず清は上座に座っていた。
そして
「────来たか」
相変わらず、温かみのない、冷たいともいえる視線を向けてくる。
その目には、肉親に向ける色など、欠片たりとも含まれていない。
「十六夜 祓、只今参上致しました」
そして清は、そうする気もないのであろう。
息子としてでなく“陰陽師の一人”として現れた祓を見るが、当然のような顔をしている。
間違えても、意外そうな顔などしない。
それ以前に、清が感情を出すことなど 滅多にないが。
「本日は、お日柄もよろし」
「前口上はいい」
嫌味のように“陰陽師”が呼び出しを受けた時にする前口上を告げようとするが、それも無表情のままの清に遮られる。
祓は、小さく息をついた。
「御用件は?」
そして簡潔に、最も清が言いたいであろうことを言う。
清はそんなさとい祓を軽く一瞥すると
「他家から依頼が来た。
お前たちには、それにあたってもらう」
本当に前口上などない、用件だけを告げる。
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