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「どのようなものですか?」
祓も余計なことは言わずに、用件だけを聞こうとする。
如何にも他人行儀な親子は、どこまでも事務的な会話を続けた。
そして清は、漸く本件に入る。
「とある家の子息が、行方不明になっている。
それを探せということだ」
「行方不明に……?」
しかし祓は、その本件に怪訝そうな顔を向ける。
十六夜家は、代々陰陽師を営む家柄だ。
探偵ではない。
そんな十六夜家に、人探しの依頼?
裏があるのではないかと疑う祓を責めることは、誰にも出来ないだろう。
「十六夜家は、いつから探偵業も営むようになったのですか?」
案の定。
不機嫌になりながら、祓は反論する。
しかし、清の対応は冷たかった。
「普段なら断っている。
陰陽師の性質上、失せ物探しも行うことは出来るがな。
しかし、これは“家同士”の繋がりのかかった依頼だ。
無下に断ることは、即ち十六夜家の孤立を意味する」
正論であっさりと反論を封じられ、祓はぐっと言葉につまる。
しかし、屁理屈を言うことはしない。
それをすれば、更に冷たい正論に屈することとなる。
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