平和

3/8
前へ
/121ページ
次へ
祓がポツリと言葉を溢すやいなや、上弦を捜しに 部屋を飛び出して行ったのだ。 そして、どうやら見事に上弦を発見したらしい。 この誇らしげな表情が、それを表している。 今焔に尻尾があったとすれば、思いっきり振っているだろう。 しかし。 祓が上弦の名前を出した瞬間、焔は戸惑ったような顔をする。 いつもはっきりと物を言う焔がこんな表情をするのは、ひどく珍しい。 祓もそれに気付いたのか、小さく眉根を寄せた。 「焔。 もしかして、上弦さんに何かあったのか?」 心配そうに尋ねる祓に、焔はぶんぶんと首を横に振る。 そして、困惑気味の顔を持て余しながらも、口を開こうとして。 「それは、私から説明させて頂きます、祓様。 今御輿様と神楽様を呼びましたから、少々お待ち下さいね」 “隠”の術か。 唐突に焔の後ろに現れた影に、驚いた。 これだけは、何度やっても慣れない。 ────というのもあるのだが。 それ以上に祓は、ここにいるはずのない人物に、驚かされた。 「ゆっ…梼浬殿っ?」 梼浬だ。 彼は忍家実務集団の長で、ここから遠く離れた地にいるはず。 なのに。 「な、何でここに?」
/121ページ

最初のコメントを投稿しよう!

638人が本棚に入れています
本棚に追加