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「じ、じゃあ……新しい実務集団の長は誰に?」
当然の成り行きだろう。
そう聞いた祓の言葉に、梼浬は沈黙する。
──かと思ったら、何と言おうか考えているようだ。
暫くすると、額に指を押しあてていた梼浬は、ゆっくりとため息をついた。
「“全優の技”に出た槻景(つきかげ)を覚えていますか?
アレです。
……実力も問題ないので、良かれと思ってしたのですが」
「もしかして……独裁してる、とかですか?」
「いや……」
妙に歯切れが悪い。
上弦を見ると、苦笑いと焦燥を 足してニで割ったような、何とも微妙な顔付きをしている。
しかし、次に口を開いたのは 上弦だった。
「実務集団の一員だった時は巧く隠していたようなのですが……
槻景は、梼浬にかなり心酔していたようなのです。
梼浬が実務集団を辞すと知った時は、自分も止めるの一点張りで。
梼浬が『お前が実務集団の中で一番信頼出来るんだ』と口説き落とさなければ、今頃ここにいるのは三人だったでしょうね。
ですが。
『行かないでください、梼浬様っ』とすがり付かれていた梼浬の困ったような顔は、たいそう見物でしたよ?」
上弦はくすりと笑うと、何とも意地悪なことを言う。
そんな上弦に一生の忠誠を誓った梼浬は、何とも微妙な顔をした。
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