プロローグ的戯言

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思い出というものは、まるで古い写真のように色褪せる… 誰かが歌で、そう言っていたのを思い出した。 …そうだろうか? 俺はそうは想えないのだ。 特に、過去に思い入れ、未練や、縛られてる人はみんなそうだと思うが… ……過去は美化される。 俺はそう、思うんだ。 気付けばいつかありし良き思い出を想い返しては、あの頃は幸福だったと考えふけっていた。 そう考えているうちに、あった筈の辛かった事も哀しかった事も、良き思い出として頭にある自伝めいた小説が、次々と美しい物語へと変換してゆくのだ。 あぁ、前の彼女に一目でもいい、いや、話しを少し位話したい。 元気かどうかだけでも話したい… いや、本当は、…前の彼女達も、俺と同じ想いでいてくれているのか?を聞きたいのが本音か。 だって、親しい友や彼女には、同じ意志を共有したいと、お節介心が働いてしまうからだ。 みんなはそうは思わないかい? まぁ、いっか、これは俺の一人よがりだ。それこそ押し付けるものでもない、個人の自由さ。 俺は大体毎日と言って頂いてもいい程、そんな事を想いながらも生きている。いつも行くコンビニ、駅のホーム、よく好きだと言っていたキャラクターが飾ってあるお店、俺は思い出がある場所を通ると、不意に誰かの姿を捜している。 もうこれも日課となっていた。 俺は新しい生活を過ごしている。 最後の彼女と別れた俺は、長くフリーターとして自由人を先頭切って歩いていた日々にサヨナラを告げた。 新しい未来を切り開こうと、今までの生活から一変させたのだ。 …正直言おう、逃げたんだよな、「未練」から。 そして、教えられた。 未来に逃げ道は無い…… …ってね………
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