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「もし、お兄ちゃんが普通の人でも、迷惑かけるかもしれない。
それに他の人にだって・・・」
少年はうつむいた。
しかし決心したばかりのロクはその言葉など聞かず、手を更に伸ばす。
「なんてことない。
困った人助けるなんて幼稚園で習う常識じゃねぇか。」
迷惑がかかるとかまだ決まったことじゃない。
細かい考えは捨ててシンプルに人道的な考えをロクは貫いた。
「ウチに来いよ。
訳は後でいいから、な!」
少年はなぜか自然とロクの手に手を伸ばしていた。
涙も渇き、胸の中の不安がほんの少し取り除かれたような気がした。
今まで感じたことのない温かさを少年は感じた。
「まずその格好どうにかしなきゃな。」
ロクは所々破けている少年の服を見て肩にかけているスポーツバッグから体操着を取り出した。
少年は明らかに大きい体操着に目を丸くした。
「少し汗かいてるかもしんないけど、家まで我慢してくれ。
自分で着替えれるか?」
少年はキョトンとした顔でコクリとうなずいた。
ロクは少年を多い隠すように背を向けた。
電柱と壁とロクの背中に挟まれ窮屈ながらもボロボロの服から体操着に着替えた。
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