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幸いほとんどの住人は明心商店街に集中しているため人通りがまったくなかった。
着替え終わった少年はさっきより目立たなくはなったものの、肘が隠れるほどの半袖の体操シャツとぶかぶかの体操ズボンはまだ少し異様に見えた。
「あっ。」
少年の体操ズボンがスルリと下までずれた。
「ハッハッ。
仕方ねぇな~。」
それを見て笑ったロクは少年のズボンを上げてズボンの中のヒモを限界まで引っ張ってずれないように結んであげた。
ロクは胸を撫で下ろそうとしたが、もう一つ忘れていたことに気が付いた。
「おっと。
そうだそうだ。」
ロクはスポーツバッグの中から汗ふきタオルを取り出し、それを少年の白髪にかぶせた。
「よくよく考えたらその白頭が1番目立つな。
あ、ちなみにそのタオルは予備用だから汗は1ミリリットルも付いてないから安心しろ。」
ニコッと笑ったロクの顔を見て少年は胸の中で感じる温かみが増してくるような気がした。
ただただその感覚に驚くばかりだった。
「んじゃ行くか。」
ロクと少年は並んで手をつないで歩いた。
少年の手はロクの大きな手に包みこまれるように握られていた。
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