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彼は、死んだらしい
目の前で儚く揺れる我が主にして我が天敵は、もうこの世にいられないらしい。
こんなときは、自分の能力の特異さに嫌気が差す。こんなもの、別に見たくはない。とっとと消えてしまえ。
「随分と滑稽なものだ。世界のドン・ボンゴレが新鋭勢力ごときにやられるとは」
彼は喋れないのか、お得意の曖昧な顔で困ったように笑った。
ゆらゆら、ゆらゆら。不安定な存在の彼は、不安定に揺れる。
「残していくのですね、全て。」
「僕たちに押し付けて、消えるつもりか」
表情は変わらない、また困ったように微笑むだけ。
虫酸が、走る。
もう時間がないのだろう彼は、薄く、薄く、世界から消えていこうとしている。
「逝くというのですか、君は」
逝けば良い、どこにでも。
「こんな醜く汚い世界に僕を留まらせた、誰でもないその君が」
この世界に僕を残して、
「1人、僕をおいて、逝くのですね。…薄情な人だ」
彼の顔が、歪む。
そろそろ限界なのか、本当に顔を歪めたのか。
彼の右手が頬を掠めた。
「待ちなさい、」
「僕は、」
「まだ、」
「なにも」
消える、消える
ゆらゆらの不安定は止まず、消えた。
彼のいない世界に興味などない。
ならば、終焉を迎えさせるだけだ、僕が、この手で、僕自身と世界に。
さぁ、始めよう
僕から彼を奪った世界への復讐劇を
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