さよならから始まった話

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一度キミに手を離された 僕は深い暗い底に再び堕ちた どんなに叫んでもキミは手を差し延べてくれなかった 僕には片方しか羽がない 片方はキミが持っていたから だから時間をかけて まだ青くて大きな空に向かって 僕は片方の羽で飛んだ 真っ黒に汚れた翼で そしてその汚れが落ちてきた時キミは戻って来た 僕の持っている翼よりボロボロな翼と大きな愛を持って 戻って来た 少し見ない間にキミは笑顔を忘れてしまったんだね 笑顔の使い方忘れたんだね 僕はピエロのようにおどけてみせた キミはこの世の終わりを見て来た暗く硬い表情から産まれたての赤ちゃんを見るお母さんのような笑顔で笑った 僕はキミを恨んでなんかない あの時キミが手を離さなければ僕は片方の翼さえ失っていたでしょう 僕のボロボロな心に大きな翼 キミの大きな愛にボロボロな翼 僕がキミを抱いて飛ぶからキミは僕を大きな愛で包んでくれないか? そしたらもう怖いものなんかないから 僕は笑顔で言った そしたら キミも笑顔でこう言った いつかあなたが苦しくなったら私があなたを抱いて飛ぶから あなたが私を包んでって 一度あなたを捨てた私をあなたは許せるの? そうだった まだ言ってなかったね ごめんごめん おかえり。
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