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五月の初めのころ。
ある街にはあちこちに白い棒にくっつく魚がひらひら空を泳いでいました。
その街の外れには大きい森が広がり、そこには魔術使いの母娘が穏やかに暮らしています。
「お母さん、私、外に遊びに行ってくるね」
美しい漆黒の長い髪をもつ幼い少女は、そう告げて扉を開けます。
「街と、遠くには行ってはいけませんよ。お母さんは薬を作っていますから、机の上にある薬草と同じものを採って来てね」
少女を見て微笑んだ女性は少女の母親。
母親は自分の腰ほどまでの高さの大きな壷を、これまた大きな木の棒で掻き混ぜて言います。
「はぁい」
机の上に置いてある少量の薬草を一つ小さな掌に掴んで、外へ出かけました。
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