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覚醒は突然だった。
ガンッ
「……痛」
心地よい眠りの中にいたはずのオレの頭上には、黒と白の二色が散りばめられた球体……サッカーボールが直撃していた。
寝転がっていた桜の根元からゆっくりと起き上がり、脇に転がったボールを手に取る。
犯人は……いた。それもののユニフォームに身を包んだ男子が、オレを見て手を振っている。
その男子を一度睨み、その後にボールを投げ返した。男子は一瞬固まり、投げられたボールを見て、逃げるように走り去って行った。二度とするな。
「あ」
再び寝ようとしたオレの目に、真っ赤な雷が落ちる瞬間がコマ送りで写った。
紅の雷。そろそろ放送が入るだろ。
ピンポンパンポーン
ほらきた。
『二年E組、葉桜夜宵(ハザクラヤヨイ)。ただちに処理に向かいなさい』
命令形かよ。だが、これが仕事だ。仕方ない。
オレは立ち上がり、紅い雷が落下した場所に走った。
†
「グルルル……」
数分後、オレの目の前では三つの首を持つ全長三メートルくらいの犬が吼えていた。
ケルベロス……もう慣れたな、こいつにも。
[夜宵]
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