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清掃員は俯き加減にワゴンを押して川上のそばまで来ると、置いてあったプレートを持ち上げて次の場所に置いた。
そのすれ違いざまに、川上は清掃員の口元に小さなホクロがあるのを見た。
色白の、まるで日本人の肌の白さとは思えないほどの、それは『透き通る』という表現が浮かぶほど、その清掃員の肌は白く美しく川上の目に映った。
清掃員の淡い紅毛と口元のホクロに、川上は胸の奥底の何かが呼び起こされたような気がした。
そのとき、待合室のテレビがニュースを伝えた。
午後三時台のスポーツに関するニュース番組で、画面では人気の女子アナが、今日本で行われている柔道の世界選手権大会を伝えていた。
《昨日行われた世界柔道選手権大会、女子48Kg以下級に出場した日本の田村亮子選手は…》
「柔道…か…」
川上は‘柔道’という言葉が我知らずして口から漏れた瞬間、ハッとして後ろを振り向いた。
清掃員がモップを立て、テレビに注目してニュースに耳を傾けている。
画面に注目している清掃員の眼は、淡い碧い色をしていた。
その、ニュース画面を見つめる清掃員の眼を見たとき、川上は全身を電流が駆け抜けような衝撃を感じた。
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