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走って、走って、息が切れてきた頃、漸く俺を追い掛けてくる足音が聞こえなくなった。
それでもまだ誰かにつけられている気がして、体力の限界がくるまでは走った。
暫くして、何かにつまずいたのか、俺はコケてしまった。
恐らく、体力の限界だ。
俯せのまま肩で呼吸をして、呼吸が止まると近くの壁まで這って行き、体を起こして壁にもたれるように、座り込んだ。
「は、はぁ…っ、ひ、ふぅ…はぁ…っ」
全く落ち着いてくれない心臓にもどかしさを感じながら辺りを見回す。
とても狭い路地だ、路地裏と言う方が正しいか?
辺りは夜中で、かなり暗いと言うのに…月明りに照らされた壁には所々血のような物が見られた。
どうやらかなり治安が悪いらしい、早く、早く立ち去らなければ…。
理解しても、危機を感じても体は動いてくれない。
チッ、と舌打ちをうつと、ジャリ、と微かな足音が聞こえた。
体が強張り、冷や汗が浮かぶ。
足音はどんどん俺に近付いてきた。
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