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見合い話を持ってきたのは、両親だった。もういい年なんだから、と渡された写真を見もせずに、いいよ、と言った。ふぅんって思ったからだ。結婚なんて、したいわけでもなかったけど、この年にもなるとしているのが普通だと、少なくとも両親はそう思っているみたいだったから。 私は、一応、仕事をしていた。日がな一日パソコンの前に座って、長ったらしい文章や数字の羅列を打ち込んでいた。所謂、事務職。 でも、別にしたくてしているわけじゃなかった。働いているのが普通だから、働いていたのだ。そんな私だから、結婚するなら仕事はやめようと決めていた。 その見合いの席で出会った男と、何の話をしたのかは正直覚えていない。確か彼はスーツを着ていたってことぐらいしか、今では思い出せない。好きか、とか、嫌いか、とかそういうことを考えてさえいなかった。 でも結婚はした。だって、結婚しようと彼が言ったから。私がいいって、言われたから。ふぅんって、思ったのだ。断る理由はなかった。 結納も、式も、全部彼が決めた。彼は吃驚するほど上手に私の両親の希望と、彼の両親の希望をクリアした。けど、彼はドレスのデザインを除いて、私には何の意見も希望も聞かなかった。これと言った希望はなかったから、別に構わなかったけれど。 招待客だって、私は、彼が決めた人数に合うように上司や同僚、友人を篩にかけた。オーバーするのを避けたら言われた数に足りなくなって、相談したら彼が不機嫌な顔をしたから、私は一所懸命に頭を働かせなくてならなかった。 私が考えたのはそれだけで、あとは彼が決めてくれたから、私にしてみればとんとん拍子に事が進んで、気付いたら結婚してましたって感じ。それを聞いた友達は、しきりに私を心配したけど、私は、すごく楽だからこれからもこうだといいのにって、今でもそう思ってる。  
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