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「ここから出た事がないのか…?」
「はい…。だから全然外を知らなくて。」
今時こういう人がいるのか…。
「出掛けたりしないのか…?!その、親とかと!」
霞は少し苦しい笑顔を見せながら、ユウキを見た。
「親は仕事でなかなか家にいないんです。出掛けたりしても自由に街を歩いたことがなくて…」
…とても悲しい顔だったんだ。
俺に勇気があれば彼女の手を握ってここから抜け出したい。
だって
一生こんなだったら
一生こんな苦しい思いなら
生きてる意味ないじゃないか…
「だから私、絵を描いてるんです。いつもここで。」
「絵…?」
霞はテーブルの下からスケッチブックを取り出した。
「下手くそでしょ?
でも好きなの。こんな綺麗な景色を自分の腕で形として閉じ込められるなんて。」
「…。」
それは下手くそなんて文字は一つもなく、
ただ綺麗で優しい
彼女の世界が
閉じ込められていた。
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