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(てか、『風が吹けば桶屋が儲かる』とか言うけど、今の季節は素直に傘屋?)
小難しい顔をしながら、彼女はやはり、鬱々と深い溜め息をついた。
「ルカ……」
茶色い角砂糖を次々にコーヒーの中へと放り込む。
その彼の様子にいつもなら瞬時に気がつき、『そんなの最早コーヒーじゃない!』と自分を詰る筈の彼女が、今日は静かだ。
流石に少し心配になった彼が、おそるおそる声をかけた。
しかし彼女は思考中だ。
(う~ん……傘屋じゃなんかつまらない。だいたい、今の時代に琵琶法師はいないんだから、昔より不利に決まってるわよ)
という種の、ある意味幸せな。
「……薬屋かな……」
「は?」
「……やっぱ、病院?」
「…………え?」
脈絡のない妹の科白に、兄は本気で心配し始めた。
(薬? ……病院?!)
思い詰めた表情が、事態をより一層、深刻なものに見せていた。
「……出来たら、やっぱり病院よね……」
心の呟きがダダモレだとも気がつかずに、彼女はまた一つ、溜め息を吐く。
しかし、この呟きを聞いた彼は、危うく持っていたコーヒーカップを落としそうになるほど驚いた。
「アツッ……!」
落としはしなかったものの、彼の白い手にまだ熱いコーヒーが数滴、飛んだ。
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