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何故だか楽しそうな兄に一瞬、言葉が出なかったが、いやいや、と彼女は必死で我に帰った。
「何の話よ! 誰が赤ちゃん産むって!?」
「え? ルカが。嫌だなぁ、いくら僕でも子どもは産めな……」
「当たり前だ、このバカ兄貴!! ってか、何でそうなってるのよ!?」
尤もな疑問を、半ばヤケ気味に彼女は口にした。
「え? だって、深刻な顔して『出来たら病院』って言ってたから、ここは兄として暖かく祝福しようかな、と」
「ちっがぁう!」
と勢いで否定したところで初めて、彼女は先ほどのくだらない心の呟きが、実際に『呟き』になっていた事を知った。
「あ、梅ちゃんは嫌? じゃ、桜ちゃんはどう? 季節がちょっとズレるけど」
「だから違うって! ってか女の子が決定事項なの?!」
「あ、そうか。男の子かぁ……」
「お願い! 話を聞いてぇ!」
彼女の言葉は、叫びと言っても良いほど必死だった。
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