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それが今はどうだろう。
瞳を潤ませ、すがるように自分を見ているではないか!
(かわ……うれしい!)
それがどんなに無理難題でも力になってやろう、と彼は密かに心に誓った。
「うん、あのね、どうしても出来ないのよ……」
「何が?」
彼は彼女と共に、キッチンへ足を踏み入れた。
彼女を悩ませるモノが何なのか、純粋に興味もあった。
彼が見たもの。
それは広いシステムキッチンに、今までに出没したことのない物体。
(まさか……やり方が分からない、とか?)
その物体を見た時、彼は真っ先にそう思ったが、すぐにそれを打ち消した。
その物体の横に、白い紙を見つけたからだ。
見ずとも、その物体をどうにかする方法が書かれていると容易に想像がつく。
ではなぜ、妹は涙目なのか?
(まさか、またタマネギじゃないだろうね……)
以前、妹が『ハンバーグ』を作った時の惨状を思い出したが、これもまた違うらしい。
タマネギらしきモノが、見当たらないからだ。
(じゃあ、何だろう?)
彼は不思議に背後にいる妹に視線を投げた。
すると彼女は恥ずかしそうに、答えを告げた。
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